「図書館司書になりたい」と言うと、本が好きなのだとイメージされやすいでしょう。
もちろん、そのとおり!
しかし、本が好きなことが司書の資質として最重要というわけではありません。
あらためて、司書の適性についてみていきましょう。
本が好きなのは基本だけど、読書好きは必須ではない
このサイトでも何度も書いていますが、図書館は情報を扱う場所です。
インターネット上に情報が溢れる時代とはいえ、本という媒体が情報の基盤であることは普遍です。
本が好きで、本という財産を大切に扱う気持ちがあることは、基本中の基本です。
また、普段から読書の習慣があるほうがいいに越したことはありませんが、決してこれは必須ではありません。
世の中にどんな本があるのかをよく知っていること、どの本にどんな情報が載っているかをある程度頭の中に入れておくことは大切ですが、いくら読書好きとはいっても、図書館にある本の内容をすべて把握するには限界があります。
それよりも、タイトルを見てどういった内容かを推測したり、本の中にある莫大な情報の中から適切な情報を素早くキャッチできる能力の方が役立ちます。
ただ、もちろん読書が不要だと言っているわけではありません。
幅広い年齢の利用者が訪れる公共図書館の司書であれば、絵本、小説、実用書、専門書とさまざまなジャンルに精通していることは確かに大切ですし、図書館で購入する本を決める「選書」にも役立つことがあるでしょう。
人とのコミュニケーションが好き
先ほど「読書好きであるほうがいいに越したことはないけど、必須ではない」と書きましたが、同時に、それが司書になるためのアピールポイントや長所にはなりにくいです。
なぜなら、仕事の多くがそうであるように、図書館の業務も圧倒的にコミュニケーションが大切だからです。
図書館の業務においても、本の貸出や返却など、カウンター業務の多くはコミュニケーションであり、接客です。
特にレファレンスでは、相手がどんな情報を求めているのかを正しく把握するための聞く能力が不可欠です。
また、読み聞かせイベントがある公共図書館、学校図書館に勤務する場合は、子どもと接することが好きであることも大切な要素になります。
そして、公共図書館は誰でも利用ができる分、本当にいろんな利用者がいます。
大きな声でおしゃべりをする、館内で飲食する、本を乱暴に扱うなど、ルールが守れない人もたくさんいます。
そういった人に注意をし、理解してもらえるよう促すことも、司書の担うべき役割になります。
誰にとっても平等で快適な図書館空間を守るためには、言いにくいこともはっきりと言える姿勢が必要です。
ほかにも、返却期限が過ぎた本の借主に対して督促の電話をかけることもあります。
このように、あらゆる面で高度なコミュニケーションが必要不可欠です。
わたしが図書館学について勉強していたときには、「これからは歌って踊れる司書が必要」とまで言われましたよ。
これはさすがに極端だと思いますが、「司書の主な業務はサービスである」ということは理解しておいたほうがいいかもしれません。
好奇心、探究心があり多趣味である
司書は利用者からあらゆる質問をされます。
日常的な話題から専門的な領域まで、その幅は本当に広く、想像もしていなかった質問を受けることもあります。
すぐに回答ができない場合は、様々な方法を駆使して利用者が求めている情報にたどり着くための道筋を探る必要があります。
本とは関係のないことや、自分が興味のないことにも常にアンテナを張っていると、レファレンスに役立つ知識の引き出しを広げることができます。
ひとつのことを深く探究する姿勢だけではなく、広い視野や、未知の世界にも足を踏み入れる勇気も大切になります。
また、それを大変だと思わず楽しめる人が、司書に向いていると思います。
体力があり、高所恐怖症ではない
司書の仕事はカウンターに座っているだけではありません。
配架や書架整理、重い本をもって図書館の中を歩き回るなど、それなりの体力も求められます。
また、脚立を使わないと本に手が届かないほど高い書架を使っている図書館もたくさんあります。
それは大抵の場合、恐怖心が募るほど高いものではありませんが、それでも図書館で働いていると、「高いところが怖い」など言ってられない場面に遭遇することはよくあります。
パソコンスキルや語学力がある
図書館は、独自システムを扱うことが多いですが、それでも基本的なパソコンスキルはあったほうがよいです。
パソコンを使った処理業務や資料作成が日常的に発生するため、パソコン操作や、Word(ワード)、Excel(エクセル)PowerPoint(パワーポイント)などのソフトを使いこなせることも必須のスキルです。
また、多言語の研究資料を扱い、留学生や外国人の教授も利用する大学図書館などでは、外国語でのレファレンスや応対ができたり、専門書を読み解けるレベルの語学力が求められる場合があります。
まとめ
「読書好き」より大切なこと 図書館司書に求められる適性とは?
- 本が好きなのは基本だけど、読書好きは必須ではない
- コミュニケーション能力、体力は必須
- 好奇心、探究心があり多趣味である
- パソコンスキルや語学力が必要となる場合もある
今日の記事では、何度か「読書好きは必須ではない」と書きました。
日本の偉大な詩人、小説家の島崎藤村の言葉に「人に三智」という言葉があります。
- 学んで得る智
- 人と交わって得る智
- 自らの体験によって得る智
人の成長には、自ら求めて学ぶ勉強が必要であり大切なことですが、多くの人とかかわりあって、他人の考え方などから学んだり想像したり、自己啓発を図ること、さらには実際に体験することも重要であるということがわかります。
読書で豊富な知識を持つことは確かに素晴らしいことですが、人とコミュニケーションをとり、好奇心や探究心を持って学ぶ姿勢があれば、読書よりも多くの有意義な情報をキャッチできることもありますよね。
それはもちろん、図書館司書だけに当てはまることではありませんが、要するに、ほかの業種に比べてなにか特別な特性が必要というよりも、バランスのとれた学びや姿勢が大切なのかもしれません。
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