旅の図書館 図書館で旅行プランを立て、旅の出発地点に




図書館のレファレンスカウンターでは、旅行に関する質問がよくあります。

 

「旅の目的地までの行き方を知りたい」とか「その土地の歴史を学べる本を読みたい」などはよくある質問ですが、面白い事例だと「旅慣れた人のカバンの使い方を知りたい。」というものなどがあります。

 

こういった質問は、もちろん近所にある公共図書館のレファレンスカウンターでもできます。

 

最近では、ネットでも調べられますよね。

 

それでも、レファレンスで質問をするということは、ネットの情報では足りないとか、ネットで簡単に探せない情報を求めている場合もあります。

 

そうなると、専門性や希少性が高くなるので、広く浅く豊富なジャンルの本を所蔵している公共図書館では、求めているような情報を得るのが難しいこともあります。

 

そんなときは、専門図書館の利用がおすすめです。

 

旅行や観光の専門図書館である旅の図書館についてみていきましょう。

 

「旅の図書館」とは?

 

旅の図書館は、観光関連の学術誌や観光統計資料をはじめ、古書・稀覯書、ガイドブック、時刻表、機内誌、観光研究の専門図書、財団の刊行物・出版物など、観光研究の参考に資する図書をとりそろえた専門図書館です。

 

1978年(昭和53年)、「テーマのある旅を応援する図書館」として、日本交通公社財団により、八重洲第一鉄鋼ビル1階に観光文化資料館が開館し、1999年に旅の図書館に改称されました。

 



 

そして、「観光はそれ自体が文化であり、その観光文化を向上させたい」という開設当初の理念を継承しつつ、「観光の研究と実務に役立つ図書館」を新たなコンセプトとして、2016年、南青山に移転、蔵書数も拡張しリニューアルオープンしました。

 

現在は、南青山の閑静な場所に位置する(筆者撮影)

 

2002年には、専門図書館協議会へ加盟し、図書館に求められる専門性を追求し「旅の図書館講座」など、図書館を会場とするセミナーや講座の開催、蔵書の中からテーマを決めての特別展示なども企画しています。

 

旅の図書館(筆者撮影)

 

さらに2014年からは、旬なテーマに詳しいゲストスピーカーを招き、気軽に研究交流を行う「たびとしょcafe」を定期的に開催しています。

 

特に観光研究の専門書や学術書の収集などに力を入れ、貴重な資料のデジタル化や古書・貴重本の閲覧、学術ジャーナルの購読・公開などにも取り組んでいます。

 

このように、基本的には専門図書館のあり方がそうであるように、研究・調査のための施設ではありますが、もちろんプライベートの旅のヒントを求めて利用することも可能です。

 

ただし、貸出はできません。

 

「旅の図書館」だけが持つ特徴

 

旅行に関する質問は公共図書館のレファレンスでも出来ると書きましたが、図書館はもちろん膨大な分類(ジャンル)の本を取り揃えているため、旅行に関する資料が豊富というわけではありません。

 

図書館によって所蔵している資料も異なり、自分の最寄りの図書館に自分が求めている資料があるとも限りません。

 

旅の図書館は、観光・旅行に特化した専門図書館なので、目的が「旅行」や「観光」などはっきりしている以上、求める情報はここで得られるでしょう。

 

では、旅の図書館にはどういった特徴があるのかもう少しみてみましょう

 

観光の研究や実務に役立つ図書館

 

「観光の研究と実務に役立つ図書館」をコンセプトに、観光分野の専門図書館として、観光を研究している人、学んでいる人、観光政策の立案、観光産業や観光地の経営や実務に携わっている人、あるいは広く観光に関する動向や歴史に興味を持っている人にとって、この図書館が助けになってくれることは間違いないでしょう。

 

専門性の高い図書や統計、公開可能な調査研究報告書なども蔵書として統合し、蔵書規模は約6万冊にも上るそうです。

 

独自の図書分類の構築

 

図書館の図書の背には、数字や記号が書かれたシールが貼られていますが、これを分類記号といいます。

 

公共図書館や大学図書館における資料・図書の分類は、一般に、日本十進分類法(NDC)を用いていますが、旅の図書館は、専門分野に対応した分類に取り組み、独自に構築されています。

 

体系的な分類に適した十進分類法を活かしつつ、観光分野に特化した収蔵資料の特徴に対応するため、以下のの3つの分類方法を導入しています。

 

観光研究資料(T分類)

観光研究の専門図書・資料

約8000冊

 

財団コレクション資料(F分類)

財団関係資料および、特徴的な収蔵資料

約28000冊

 

基礎文献(NDC分類)

観光に関わる基礎的文献

約14000冊

 

ピンクで囲っているものが専門的なもので、研究や調査で使用する資料

旅の歴史や、社寺、祭り、温泉、民俗学などの一般的な基礎資料は、従来のNDC分類を利用しています。

 

階段の壁を効率的に利用した書架(筆者撮影)

 

言葉で説明すると分かりにくいですが、とてもシンプルで分かりやすい分類になっています。

 

専門性・希少性の高い蔵書の公開

 

古書・稀覯書2,300冊を公開しています。

 

旅の図書館は、これまでも古書や稀覯書を収集し、予約限定で閲覧できましたが、最近、専用書架を設置して、来館時の公開性を高めました。

 

それらは、外国の観光政策を日本語に訳した戦前の本、明治期の日本国内の温泉や観光地の様子を記した文献、あるいは昭和初期の日本の観光魅力を英語で紹介したガイドブックなど、国内外の政府組織や旅行・観光産業界が発行、活用してきた貴重な資料です。

 



 

「旅の図書館」で旅行の下調べを

 

開館当初は、豪華写真集を中心とした4000冊の蔵書を公開していたそうですが、旅行に役立つ資料を充実させることを目指し、現在では、日本各地、世界各国の旅行ガイドブック、地図、時刻表、旅行関連雑誌、紀行文など、旅行・観光に関する資料・情報の収集に力を入れてきたそうです。

「旅の図書館」で旅行の下調べを

 

蔵書数が増えるとともに、利用者数も増加し、まさに旅行に役立つ図書館として、研究調査以外にも利用されています。

 

先に目的地を決めて、旅の図書館で行き方や歴史などの下調べをするもよし、

まず、旅の図書館に行ってから、目的地を選ぶのもよし。

 

旅の図書館から旅をスタートさせてみるのはいかがですか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA