図書館が生まれた起源は何だろう?
公共図書館は昔から誰でも入れたの?
図書館の歴史をたどると、世界の歴史がみえてきます。
今日は、図書館の歴史について学べる絵本を紹介します。
大人にもおすすめです。
図書館の歴史がわかる絵本
図書館の歴史がわかる絵本を6冊紹介します。
ジャンルごとに分類しています。
アメリカ南部 人種差別と図書館
1920年〜50年代にアメリカ南部に蔓延った黒人差別は、その地域にある図書館にも強く影響がありました。
それは歴史の一部となり、”なかったこと”にはできません。
自身の体験をもとにアメリカ南部の図書館の話を描いた絵本が2010年に2冊出版されました。
「わたしのとくべつな場所」
肌の色がちがうというだけで差別を受けた1950年代のアメリカ南部。
12才になったパトリシアは「とくべつな場所」をめざして一人で家を出ます。
そこは、人種に関係なく誰でも自由に入ることが可能になった、米テネシー州ナッシュビルの公共図書館です。
その道中、彼女は何度も、人種差別という試練に直面します。
それでも、大好きなおばあちゃんが着せてくれた花柄のワンピース、家族の愛と自尊心を強さに乗り越え、パトリシアはついに「とくべつな場所」にたどり着きます。
そこは、「希望のつまった場所」、「自由への入り口」です。
ひとことに「差別」とは言っても、具体的にどのような扱いを受けていたのか、パトリシアの小さな冒険を通じてわたしたちも知ることになります。
同時に悔しさや憤りも…
そして図書館にたどり着いたとき、目の前に現れた図書館のひとことに救われ、感動する気持ちもきっと、だれもが同じであると願います。
主人公だけではなく、さまざまな立場の視点から考えさせられる1冊です。
「ぼくの図書館カード」
1960年に亡くなったベストセラー作家、リチャード・ライトの自伝的物語です。
1920年代のアメリカ南部。人種差別が色濃く、黒人にまともな市民権もなかった時代、おかあさんやおじいさんからたくさんお話を聞いて育った「ぼく」は、本が読みたいという気持ちでいっぱいでした。
しかし、本を買うお金はありません。
黒人は図書館を使うこともできませんでした。
図書館の利用者カードを持つことさえ許されなかったのです。
「ぼく」は、図書館から本を借りるためにある考えを思いつきます――。
「本を読みたい」と願う強い心と、周囲に流されず自分の考えで物事を判断する理解者がいたことで、まさに、本の扉を開いていくお話です。
比べようはないのですが、もう1冊の「わたしのとくべつな場所」より30年前の時代を描いたこちらの状況はもう少し過酷です。
なにしろ、図書館を使うことが許されない時代であり、図書館員の態度も非常に冷酷です。
自分だったらどうするか?
このような時代があったということを伝える教科書のような絵本です。
最後の「あとがき」まで必読です。
図書館「児童サービス」の誕生
今でこそ当たり前のように公共図書館にある児童室(コーナー)ですが、一人の女性の、さまざまな苦労や工夫の上に成り立っている図書館のサービスです。
「図書館に児童室ができた日: アン・キャロル・ムーアのものがたり」
19世紀終わりのアメリカ。
図書館は大人だけの世界で子どもたちは図書館に入れませんでした。
図書館は本を借りるところではなく、図書館の中だけで手に取れるもの。
本は鎖でつながれ、その図書館に入るのにもお金がかかりました。
今では考えられない事が普通だった時代。
女性が自分の考えで仕事を選ぶことも珍しいことでした。
小さな町に生まれ育ったアン・キャロル・ムーアは、自分の考えを貫き、やがて、ニューヨークで図書館学を学んだのち、ニューヨーク公共図書館の児童室の創設にたずさわり、児童図書館サービスの先駆者のひとりとなります。
アンの性格を特徴づけるものとして「じぶんのかんがえをしっかりもった」という文章が二度出てきます。
女の子は本なんて読まなくていいと言われていた時代に、自分の考えや思いを曲げることなく努力し「世界中の子どもたちに本を読む」という素晴らしいプレゼントを贈った女性の生き方と図書館児童室の歴史を語る絵本です。
図書館好きなすべての人に読んでほしい1冊です。
本と図書館の歴史からみる世界史
本や図書館が好きならば、世界史を勉強する必要はないかもしれません。
本と図書館の歴史をたどれば、世界の歴史がみえてきます。
「本と図書館の歴史-ラクダの移動図書館から電子書籍まで」
人間は、5000年以上も前から身のまわりのことがらについて書きとめてきました。
やわらかい粘土に記号や符号を彫ったり、
石に文字を刻んだり、
コンピュータに入力したり・・・
方法はさまざまですが、思想やアイディアや日々の生活について、常に記録してきました。
「知りたい」「伝えたい」「残したい」という、人間の強い想いが本の歴史を作ってきたのです。
また、同じくらい大昔から、記録を分類し保管する方法を考えだし、ほかの人が簡単に利用できるようにしたり、後世のために保存したりしてきました。
これが図書館のはじまりです。
古代図書館の誕生から、現代の電子書籍までの図書館の歴史を網羅した作品でわかりやすい絵本になっているものの、内容は世界史のレベルです。
この絵本からわかることは「本と図書館の歴史をたどることは、世界の歴史をだどることに繋がる」ということです。
「図書館は人を育てる」その具体例であるカーネギーの話も感動的です。
正規の教育をほとんど受けていないカーネギーは、職業学校と図書館で勉強することにより事業で大成功し、「地域社会に貢献する最善の方法は、意欲的な人間がよしのぼれるように、その手の届くところに はしごをかけることだ」と言い、財産のほとんどを使って世界に2811館の公共図書館を建てました。
前述の19世紀のアメリカで「児童図書室」をつくったアン・キャロル・ムーアのお話もでてきますよ。
世界の移動図書館
学校に通えず図書館もないところに住み、文字や情報の届かない子どもがいた時代があります。
今でもまだ十分に本が読めない国がたくさんあります。
そして、そのような国や地域の子どもたち(人たち)のために、その土地にあった移動手段を使って、本を届けている人たちがいます。
図書館ラクダがやってくる―子どもたちに本をとどける世界の活動
難民地区、北極圏、小さな島々、砂漠の向こうにある町、ジャングルにある村。
世界には、自由に本を選べる環境になく、それが届くことを待っている子どもたちがいます。
そして、その子どもたちに本を届けようとするシステムがあり、本を届けている人がいます。
トラック、トレーラー、郵便、船、自転車、ラクダ、ロバ、象。
あらゆるものが手段となって、本を運びます。
「子どもたちに本をとどける世界の活動」を解説した写真絵本です。
出てくる国は、
オーストラリア、アゼルバイジャン、カナダ、イングランド、フィンランド、インドネシア、ケニヤ、モンゴル、パキスタン、パプア・ニューギニア、ペルー、タイ、ジンバブエ。
世界の様々な移動図書館の様子が紹介されていますが、何より、本を求めて集まってくる子どもたちの姿が美しいです。
また、「わたしたちにとって、移動図書館は、空気や水と同じくらいたいせつなものなのです」という図書館員の言葉が印象的です。
本を読めるありがたさと図書館の大切さが伝わる1冊です。
ぼくのブック・ウーマン
1930年代、当時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが提案した「雇用促進事業計画」として、遠隔地・僻地に住む人たちに本を届ける「荷馬図書館計画」が開始しました。
それが「ブック・ウーマン」という職業の誕生です。
先の「図書館ラクダがやってくる」の80年ほど前、アメリカケンタッキー州のアパラチア山脈あたりで活動していたブック・ウーマンをモデルにした作品です。
少年カルは、山のずっと高いところに家族と暮らしています。
長男であるカルは立派な家業の働き手で、学校にいくこともなければ文字すら読むことができません。
もちろん、近所には図書館もありません。
妹のラークは本が大好きで、暇さえあれば本を眺めているのですが、ラークは字を覚える気などありません。
しかし、ある日、ひとりの女性が本をいっぱい詰め込んだ荷物を持って馬に乗ってやってきました。
2週間ごとに、雨の日も霧の日も凍えそうな寒い日もやってきて新しい本を貸してくれるブック・ウーマンのエネルギッシュな活動がカルを変えていきます。
本も文字も学問もなくも済まされた時代。
学校に通えず図書館もないところに住み、文字や情報の届かない子どもがいたこと。
そして、どんな環境でも、どんな時代でも、質の高い素敵な文化・学問を子どもたちに与えたいと願う大人がいたこと。
そんなことが学べる1冊です。
今は、学問も文字もあり恵まれた環境の中にいながら本離れが進んでいる時代です。
ないものばかりに目を向けるのではなく、あるものに感謝し、それを大いに活用していきたいと、そんなことも考えされます。
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