どこの図書館にも必ず1台はコピー機が置いてありますよね。
コピーが必要になった時に、コピーするもの(原本)を持って図書館に行こうと思う人もいるかもしれないし、図書館で必要な資料を見つけたときに、それをそのまま図書館でコピーしたいと思うこともありますよね。
普段、あまり細かく気にすることではないと思いますが、図書館に置いてあるコピー機って、本来、何でも(もちろん法律で禁じられているものを除いて)コピーしていいのでしょうか?
それとも何かルールがあるのでしょうか。
ちなみに、図書館では「複写サービス」といいますが、ここでは分かりやすくこのまま「コピー」という言葉で続けさせていただきます。
図書館のものではない持ち込み資料のコピーについて
まず、図書館に置いてある資料(本、雑誌など)ではなく、図書館以外の場所から持ち込んだ資料は、図書館でコピーをしてもいいのでしょうか?
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答えは、「ダメ」です。
これは、図書館法ではなく、著作権法に関わる問題で「著作権法第31条」がこれに当たります。
「著作権法第31条」には、
”対象資料は複写を行う図書館で管理している資料に限られる”
と書かれています。
よくある例として、学生が自分の参考書を図書館に持ち込んで、そこでコピーを取るというのは、本来は禁止されている行為ということになります。
では、それがわかったところでもうひとつ疑問が残ります。
別の図書館から資料を取り寄せた場合、その資料のコピーは可能なのでしょうか?
図書館間で借りた資料のコピーについて
以前、「図書館で本を借りるために、知っておきたいお得な制度」という記事にも書きましたが、図書館では、
- 予約することによって同じ自治体が管轄する別の図書館から本を取り寄せること
- 相互貸借によって別の自治体や国立国会図書館などから目的の資料を取り寄せること
これらが可能です。
では、それによって、図書館に届いた目的の資料は、今いる図書館でコピーしてもいいのでしょうか。
例)A館からB館に取り寄せた場合、B館でA館の資料のコピーはできるのか?
以前(10年以上前)までは、借り受けた図書(B館)は、自館で所蔵する図書館資料でないということから、コピーは許可をせず、一旦返却した後に、図書を貸し出した図書館(A館)にコピー依頼をし、A館からコピーの提供を受けていました。
しかし、それだと双方の図書館の業務が余分に増える上、利用者にとっては、いくらルールとはいえ理解することが極めて困難です。
目の前にある図書のコピーを入手するために、時間、経費が余分にかかってくるわけです。
一方、権利者にとっても著作権法で認められた範囲内で複製(コピー)が行われる限り、どこで図書のコピーが行われてもその実態に変わりはなく、いったい何のだれのための著作権なのか?
と、あまりにも臨機応変さに欠けるルールだったのです。
そこで2005年、全国公共図書館協議会において原則的には許可するというガイドラインが新たに設けられました。
日本図書館協会ー著作権法第31条運用ガイドライン「図書館間協力における現物貸借で借り受けた図書の複製に関するガイドライン」
これによって、多館から取り寄せた資料についても、取り寄せ手続きを行った図書館(今いる図書館)でコピーすることが可能になりました。
図書館にある資料のコピーについて
では、実際に自分が今いる図書館にある資料は何でもコピーしていいのかというと、そういうわけでもありません。
まず、図書館にある本(小説、記事、論文、絵画、写真、地図、楽曲など)には、1冊1冊(ひとつずつ)それぞれに著者などの権利者がおり、その権利者に対して著作権が発生するので、それは図書館の権利ではないのです。
なので、図書館のコピー機でコピーをする場合、
- まず、それが図書館の資料であること
- 次にその対象物に対しての権利を理解した上で、その範囲内でコピー可能
ということになります。
では、その範囲内というものをみていきましょう。
図書館の資料をコピーするときに知っておきたい著作権
実際に図書館で図書館の資料などをコピーする際に、どんなことに気をつけるべきかというのを見ていきましょう。
新聞・雑誌をコピーできる範囲
図書館には、必ず新聞、雑誌がありますね。
そのいずれも、まず最新号(新聞であれば当日分)はコピーが禁じられています。
正確には、次号が発行されるまではできません。
それ以降は、雑誌・新聞等に掲載された個々の論文・地図・写真・絵画・楽譜等の著作物については、すべてコピーできます。
具体的には刊行頻度に応じて以下の例のように取り扱っています。
週刊誌 → 1週間が経過するまで
月刊誌 → 1か月間が経過するまで
季刊・年刊の雑誌など → 3か月間が経過するまで
新聞(日刊) → 当該日が経過するまで
それ以外の資料のコピーできる範囲
基本的には「著作物の半分まで」となりますが、その半分までの考え方が、資料によって変わってきます。
資料の種類 | コピーできる具体的な範囲 |
単行本 | 半分まで |
短編・論文集、分担執筆物など | それぞれの作品、論文、執筆箇所の半分まで |
論文 | 1冊が1つの論文で構成されている場合には半分まで 複数冊で構成されている場合は、それぞれの冊子の半分まで 1冊が複数の論文で構成されている場合は、各論文の半分まで |
地図 | 1枚ものの地図の場合は、その1枚の半分まで 地図帳の場合、1つの地図の半分まで(1ページ以下の地図は複写不可) ※国土地理院が作成した地図は、調査研究目的であれば、全部複写可(CD-ROMを除く。) |
写真、絵画 | 個々の半分まで(1ページ以下の写真、絵画は複写不可) |
楽譜・歌詞 | 個々の楽譜・歌詞の半分まで(1ページ以下の楽譜・歌詞は複写不可) |
まとめ
図書館でコピーする前に知っておきたい著作権など
いかがでしたか?
- 図書館のコピー機でコピーしていいのは、図書館においてある資料だけ
- 資料にはそれぞれ著作権があり、コピーできる範囲は、「半分まで」
- 「半分まで」の範囲も資料によってそれぞれ
複雑なようですが、それぞれの資料の性質を理解した上で「半分まで」ということを知っておけば、違法してしまうこともありません。
たとえば「4コマ漫画」は、4コマで構成された漫画がひとつの作品になるので、その半分(要するに2コマまで)しかコピーできません。
まるで「残りの2コマを考えてみよう」ゲームみたいで笑ってしまいそうですが、「それを創作した者」の創造物を盗まないというルールを理解するために最もわかりやすい例とも言えます。
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