国家資格である「司書資格」は、世界で共通しないと考えていますか?
確かに日本の司書の養成は、短期大学や学部レベルでの図書館情報学、いわゆる司書課程での24単位履修が主流となっています。
すなわち、学部レベルの養成と言っても専攻や学科ではなく課程での養成。
国家資格だから…という理由だけではなく、他国で司書として働こうと考えたら語学力に加え、追加の学位や訓練が必要になるでしょう。
それでも、もし「司書」「図書館」「世界」これらのキーワードがあなたの夢や目標として存在し、熱意と情熱があるなら、あと2つのキーワードを追加して、是非とも目標を国内以外にも定めてみてください!
司書資格を国際資格にするものとは?
そのキーワードとは
- ALA認定
- MLIS
この2つです。
司書を国際資格にするもの① 「ALA」とは
ALAとは、「American Library Association」の略で、アメリカ図書館協会のことを意味します。
世界で最も古く、かつ最大の図書館協会です。
アメリカではALAの図書館学教育認定基準(1951年)により、司書の養成は大学院で行われるようになり、最新の情報(2015年)*1でも、適切な資格はALA認定の図書館情報学部からの修士号を要求すると記しています。
アメリカの図書館情報学の学位の中にはALA認定ではないものもあるので、大学を選ぶ際にはそこに注視することが必要です。
*1 American Library Association,ALA Policy Manual.B.9.2.
http://www.ala.org/aboutala/governance/policymanual/updatedpolicymanual/section2/54libpersonnel#B.9.2
司書を国際資格にするもの② MLISとは
MLISは、「Master of Library and Information Science」の略で、図書館情報学の修士の学位のことです。
前述の通り、アメリカでは適切な司書資格はALA認定の修士号を要するとなっていることから、ALA認定だけではなくMLISも重要であることがわかります。
まさに、これこそが世界で通用する「国際図書館司書資格」といえるものです。
(もちろん、実際には「国際司書資格」なるものはありません。)
ALA認定のMLISを持っていれば、追加の資格や試験などを受ける必要もなく他国でそのまま働ける可能性があるのです。
テネシー大学附属図書館の司書で、データキュレーションに従事するクリス・エーカー氏が、各国の図書館協会にコンタクトを取りまとめた結果が大変参考になります。
ALA認定のMLIS以外に追加の資格や知識が必要とされない国
アメリカでALA認定のMLISを取得すれば、そのまま働ける国があります。
オーストラリア(ALIA)
オーストラリア図書館協会(ALIA)は、ALAとの相互協定を持っています。
この相互協定の下で、ALA認定修士号を取得したアメリカの卒業生は、ALIAアソシエイト(司書)会員資格を得ることができ、オーストラリアの司書同等ポジションに応募することができます。
ニュージーランド(LIANZA)
ニュージーランドアオテアロアの図書館協会 (LIANZA)は、ALAの姉妹組織とみなされており、アメリカのALA認定修士号を受け入れています。
イギリス(CILIP)
図書館情報専門家のチャータード研究所(CILIP)は、ALAとの相互契約を締結しています。
これにより、アメリカの図書館および情報科学の学士号または修士号を保持している卒業生は、英国の有資格図書館員および情報専門家を求める仕事に応募することができます。
アイルランド
アイルランドの図書館協会はALAの姉妹団体であり、ALA認定の図書館情報学有資格者を歓迎しています。
アイルランドで唯一のLISスクール(University College Dublin)がALAによって正式に承認されています。
そのため、アイルランドのALA認定図書館情報学学位を持つ者もまた、アメリカの図書館で働く資格があります。
また、ほかの海外での資格(ALA認定以外の司書資格)はケースバイケースで検討されます。
日本の司書資格取得者にもチャンスがあるということを意味します。
カナダ(CLA)
カナダ図書館協会(CLA)は、プロの資格を構成するALAの定義を受け入れています。
「(アメリカ図書館協会によって)認定されているプログラムからの修士の学位、また、国の適切な認定を受けている図書館情報学修士レベルのプログラムを終えていることは、図書館員にとって適切な職業学位である。」
この文章を読む限り、日本の大学で図書館情報学の修士号+司書資格を所有している場合も、カナダで受け入れられる可能性があると考えられます。
香港
香港図書館協会は、ALA認定プログラムの修士号を受け入れています。
シンガポール
アメリカの学生がシンガポールの図書館で働くことに興味がある場合、シンガポールはALA認定修士号を歓迎しています。
実際にシンガポールは、専門学位を取得するために、彼らの司書(シンガポールの公務員として働く司書)を毎年何人かアメリカに送っているそうです。
追加のトレーニングは必要ありません。
唯一障害だと言えることは、外国人がシンガポール労働省の組織で働くためには、雇用してくれる図書館が、彼らを就職させる前に雇用パス(就労ビザなど)を申請しなければならないということです。
ALA認定MLIS以外に新しい言語習得が必要な国
ALA認定の図書館情報学修士号だけでは不十分で、その国の語学力などが必須となる国もあります。
ドイツ
ドイツのBerufsverband Information Bibliothek(BIB)によると、最も重要な問題は、ビジネスレベルのドイツ語を理解していること、そして図書館がその人を採用するだけの理由があることです。
たとえば、応募者の出身地に関する専門図書館であったり、日本人であれば、日本語の書籍を多く扱う図書館であるなどです。
それでもALA認定MLISや経験豊富な司書のために、BIB-ALA(ドイツ – 米国司書交換)というとてもよい機会が設けられています。
ALAとBIBは、メンバーが職業交換のための図書館を見つけるのを手助けするための協定に署名しました。
デンマーク
デンマークの図書館がALAのMLIS取得者を受け入れる門徒は大きく開かれていますが、それは求められる資質を十分に正確に持っている場合だけです。
とりわけ、言葉は障壁です。
デンマーク公共図書館では、流暢なデンマーク語を話す必要があります。
デンマーク語は習得が非常に難しい言語です。
フィンランド
フィンランドでは図書館サービスで働く専門家の訓練に関して規制があります。
資格のある司書として働くためには、フィンランド国立教育委員会からの決定を申請する必要があります。
ただし、フィンランドの図書館で短期間働く目的であれば、正式な決定は必要ありません。
資格の認定は常にケースバイケースで行われます。
このため、特定の外国の資格がフィンランドにおけるどの資格に対応するのかを事前に決定することを保証したり、決定的な評価を下したりすることはできません。
前提条件は常に、その人が出身国の図書館サービスで働く資格があること、そして高等教育機関の学位と学位授与の両方が認定されており、その国の公式高等教育システムの一部であることです。
ベルギー
ALA認定を受けた学生は、ベルギーに拠点を置くアメリカの企業によってかなり考慮されます。
公共図書館については(学生の言語レベルに応じて)無給の配置が可能ですが、主要な採用条件の1つがベルギー国籍であるため、専門家の採用は困難です。
情報センターや大学図書館への配置も可能です。
学生が仕事を得るためにベルギーに行きたいのであれば、ベルギーの大学で博士号を取得することを調査するべきです。
まとめ
世界で通用する「国際図書館司書資格」とは?
- ALA(アメリカ図書館協会)認定のMLIS(図書館情報学修士)を取得していれば、さまざまな国で司書として働ける可能性が広がる。
- ALA認定の図書館情報学修士で働ける国は、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、アイルランド、カナダ、香港、シンガポール。
- ALA認定のMLISプラス流暢な現地語など他要件をクリアすることで勤務可能な国は、ドイツ、デンマーク、フィンランド、ベルギー。
- 資格の認定についてケースバイケースで検討されるアイルランド、カナダ、フィンランドにおいては、日本の図書館情報学修士号+司書資格の所有で働ける可能性がある。
日本人の場合は言語の問題が立ちはだかりますが、それは、アメリカの図書館情報学修士号を取得する過程で同時にクリアできることと思います。
また、今回の記事では他国で働ける可能性のある資格ということ以外に、ビザの問題について触れていませんね。
それについてはこちらの記事で書いています。
ーALA(American Library Association)アメリカ図書館協会
ー世界中の図書館協会リスト
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_library_associations
http://www.ala.org/offices/iro/intlassocorgconf/libraryassociations
ーChris Eaker 「Oh, the Places You’ll Go (with your MLIS)!」(January23. 2012)hls
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