図書館ホームページに自分の「貸出履歴」を残せない理由とは




これまで、「カーリル」や「図書館日和」など、図書館を便利に使うアプリやツールを紹介しました。

 

これらのツールの便利な機能のひとつに、読みたい本や読んだ本のリストが作成できるというものがあります。

 

 

なぜそれが図書館を使うための”便利な機能”になるのでしょうか。

 

「図書館ホームページでそれができないから」というのは大きな理由のひとつです。

 

各図書館にはホームページがあり、ログインをすると、借りたい本の予約をしたり、貸りている本の貸出延長をすることができます。

 

自分が決めたパスワードでログインをするのに、自分がこれまで貸りたものの履歴が残せないのは少し不便のようにも感じますが、図書館ホームページに貸出履歴が残せない理由はあるのでしょうか。

 

図書館ホームページに自分の「貸出履歴」を残せない理由

 

「いままで自分が借りた本の履歴を知りたい」と思う人は多いようで、いろいろな図書館の「よくある質問」にもこのような質問が掲載されています。

 

たいていは、

本が返却されると、貸出データは消去しています。
貸出履歴は残していないので、今までに借りた本を調べることはできません。

という、「できない」という事実を説明するだけにとどまっていますが、詳しく説明してくれている図書館もあります。

 

たとえば、千葉県市川市の市立図書館のホームページにはこのような説明があります。

 

市川市立図書館 Q&A

 

Q:いままで自分が借りた本の履歴を、パスワードで参照できますか?

 

ーー 貸出履歴、予約履歴等の情報は、個人情報の中でも「思想・信条の自由」に触れるものであり、きわめてセンシティブな情報(機微な情報)として、取り扱いには十分な配慮が必要なものです。

日本図書館協会は「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」のなかで、「返却後できるだけ速やかに消去しなければならない」との基準を設けています

このため市販の図書館システムパッケージにおいては、返却と同時に貸出データが消去されるようになっています

 



 

また、東京都北区立図書館は、図書館ではなく北区のホームページの意見として公開しています。

 

東京都北区への意見

 

意見:貸出カードを作成してから現在までに、自分が北区図書館から貸りた本の一覧を見たいのですが、記録を何らかの形で見ることは可能でしょうか。

自分が過去に読んだ本のタイトルが分からず、一覧で確認したいと思っています。可能であれば、どのような手続きが必要になりますか。

 

ーー 図書館では統計等で利用するために貸出件数などの数値は残しておりますが、お客様を特定した内容の貸出履歴は残しておりません

 

これは公共図書館共通の考え方として、個人の趣味、思想が容易に判断できる個人情報を、必要以上に持つべきではないという観点から実施しているものです。

 

貸出履歴の参照を望まれる声はたびたび聞かれます。

 

ただ、誠に申し訳ありませんが、上記のことからも、今後も情報の開示は難しいものと思われますので、なにとぞご了承ください。

 

市川市や北区が公表してくれているとおり、個人情報の中でも、個人の趣味、思想が容易に判断できる「思想・信条の自由」に触れるものを、図書館(自治体)が必要以上に持つべきではないという観点から実施していることがわかります。

 

図書館は利用者の秘密を守る

 

図書館を舞台にした人気作「図書館戦争」は、現実に存在する「図書館の自由に関する宣言」をモチーフにストーリーが展開します。

 

図書館ホームページで自分の貸出履歴がみれない理由は、まさにこの「図書館の自由に関する宣言」が関係しています。

 

 

「図書館の自由に関する宣言」の第3『図書館は利用者の秘密を守る。』

1 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする

 

憲法第35条は、[住居への侵入・捜索や押収についての保障]

※ただ、実際にはデータは削除される図書館が多いので、「憲法第35条」にもとづく令状を確認したところで、データがないので確認できないと思われます。

 

図書館(自治体)によって、返却と同時に即消去するプログラムにしているか、保管期間を設けているかの違いはあるとのことです。

また、この保管期間というのも各図書館(自治体)によって差があり、公表されていません。

 

図書館は不必要な記録の作成を避ける

 

以下はアメリカの例ですが、

政府が図書館利用に関心を示すとき、信条や行動様式と読書内容を同一視する点で、危険であり、誤りでもある(図書館利用記録の保持に関する決議)

との根拠から、

アメリカ図書館協会はすべての図書館に以下の措置をとるように主張し、決議しています。

  • 個人識別情報の収集、監視、開示、配布の度合いを制限する。
  • 不必要な記録の作成を避ける

 

 

少し分かりにくいですが、政府が図書館に情報を求めたときに、個人の信条や思考が分かってしまうことは断固としてあってはならない

との考えから来ていると考えられます。

 

そして、日本の図書館もこれを踏襲していると考えられます。

 

ただし、

  • 年ごとに、プライバシーに関する情報について、収集、蓄積、共有、使用、廃棄の方法を検討する。

 

ともあるので、どこかのタイミングで図書館ホームページに貸出履歴が残るようになる可能性もなくはないのでは?と考えてしまいます。

 

図書館システムの限界

 

前述のように、毎年、プライバシーに関する情報について、収集、蓄積、共有、使用、廃棄の方法を検討するのならば、やがて貸出履歴を残せるようにもなりそうですが、情報量が多すぎ、システムがパンクすることが考えられます。

 

今のところ、現実的ではないと思われます。

 



 

まとめ

 

図書館ホームページに自分の「貸出履歴」を残せない理由

 

まとめ
  1. 図書館では、本が返却されると、貸出データは消去している
  2. 個人の趣味、思想が容易に判断できる個人情報を、必要以上に持つべきではないという観点から実施しているもの
  3. 利用者の秘密を守るために、不必要な記録の作成を避けている

 

単純に考えると不便な話ですが、図書館という機関は自治体が運営しているものであり、もっと広範囲に見ると国が管理できてしまう可能性があるものなので、国が個人の思想や趣味を保管していると考えると少し恐いですね。

 

参考資料・文献

河井弘志、宮部頼子編『図書館概論 改定2版』教育資料出版会 p33

日本図書館協会『図書館の自由に関する事例3選』p180

「図書館の原則 改訂4版」アメリカ図書館協会知的自由部編纂『図書館における知的自由マニュアル 第9版』p96-97

尾崎哲夫『条文ガイド六法 憲法』自由国民社

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