愛読家と図書館愛好家のためのロンドン「パブ」ガイド




図書館を目的に旅をするなら、ついでにその他の文学的スポットも見ておきたいですよね。

ロンドンは、世界で最も文学的な都市といっても過言ではないほど見どころが満載です。

 

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今日は、イギリス文学と造詣が深い、パブ(Pub)です。

 

イギリス文学とパブ

 

欧米(とくに英語圏の先進国)には、街のあちこちにパブがあります。

 

「お酒を飲む場所」というイメージが強く、日本で言うところの居酒屋やバーに例えられますが、それらは似て非なるもの。

最近、日本各地に「HUB」というチェーン店がありますが、あれに近い感じもしますが、パブは「Public House」の略で、もともと「お酒を飲む場所」というよりも、その地域の人たちの「社交の場」という存在で、飲むための「場所」というよりは「建物」全体を示すことが一般的です。

中には宿泊施設を兼ね備えているところもあるので、ロンドンを訪れた際にはパブに宿泊という体験もおすすめです。

 

昼前から営業し、食べ物もつまみだけではなくナイフとフォークを使って食べるようなきちんとした食事が提供され、親同伴であれば子どもが入店し、食事をすることもできます。

 

さて、この「パブ」は、イギリス発祥の伝統的な文化です。

こちら(「愛読家と図書館愛好家のためのロンドンガイド【ブックカフェ編】」)同様、パブと文学もまた親密な関係にあります。

 

シェークスピア、チャールズ・ディケンズ、ジョージ・オーウェル、サミュエル・ジョンソンなどイギリスの素晴らしい作家たちもパブに通い、新しいアイデアを見つけたり書いたりしたのです。

 

イギリスを代表する有名作家と所縁のあるロンドンのパブ10選を紹介します。

 

イギリスを代表する有名作家と所縁のあるロンドンのパブ10選

 

 

 

シェイクスピアも通った Anchor Bankside

 

1615年に設立されたアンカー・バンクサイドは、テムズ川の南岸、シェイクスピア・グローブのすぐ下流にあるバンクサイドの美しい場所を占めています。

このパブの有名なパトロンにシェイクスピアがおり、ほかに英語辞典の編集人であるサミュエル・ジョンソン、詳細に遺した日記で知られる17世紀のイギリスの官僚サミュエル・ピープスがいます。

夏は常に繁盛しており、活気に満ちています。

 

 

『時計じかけのオレンジ』を生んだ?! Duke of York

 

1943年のある晩、作家のアンソニー・バージェスが妻のリンと「Duke of York」を訪れたのは、地元のギャングに絡まれてのことだと言われています。

ギャングがビールグラスを床に落として威嚇すると、リンはビールがもったいないと嘆き、怒ったギャングに大量のパイント(イギリスの大きなビールグラス)で飲むように求められ、実行します。

それを見たギャングは非常に感銘を受け、ビールの代金を払い、他の地元のギャングからリンを守るようになったそうです。

その晩の出来事が、後に「時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)」の暴力シーンの着想に影響を与えたという推測があります。

 

チャールズ・ディケンズのお気に入り George Inn

 

ジョージ・インは、サザーク(Sauth work)のボロウ・ハイ・ストリート(Borough High St)にのロンドン橋の近くにあります。

中世の時代に設立された公共の建物で、現在、ナショナルトラストが所有および管理をしています。

ロンドンで唯一現存するギャラリー付きのコーチングイン(馬車で旅行する人々が使用した英国の小さなホテル)があり、夏の夜のに最適な広々とした中庭があります。

16世紀後半から17世紀初期にシェイクスピアのお気に入りで、18世紀には、チャールズ・ディケンズが頻繁に訪れる場所だったといわれています。

ディケンズの小説「リトル・ドリット」にも登場し、ジョージ・インからボロウ・ハイ・ストリートを南西に下ったところに「リトル・ドリット」名付けられた公共の公園もあります。

 

シャルル・ド・ゴール活動の拠点? The French House

 

フレンチ・ハウスは、ソーホーのディーン・ストリート(Dean St)にある居心地の良い小さな酒場で、ボヘミアンな人々を魅了しています。

フランス第18代大統領のシャルル・ド・ゴールは、第二次世界大戦のロンドン亡命中、ドイツによるフランス占領に反対し、亡命フランス人による独自の「自由フランス軍」を率い、活動しますが、このパブをその拠点として使用したといわれています。

ウェールズの作家ディラン・トマスもここでお酒を飲んでいました。

壁に豊富な写真がコラージュのように並び、ワインの瓶が所狭しと並ぶカウンターも素敵。

そう、「フレンチ・ハウス」だけに、ビールよりワインの方が豊富なのです。

 

多くの文豪が愛した Ye Olde Cheshire Cheese

 

ロンドンで最も古い地区、シティにある創業1538年の歴史ある老舗のパブで重要建築物の1つとして登録されています。

店の前に立った瞬間からタイムスリップしたかのような錯覚に陥り、店内に入ると、今度は映画のセットか何かと見紛うほどです。

チャールズ・ディケンズ、アーサー・コナン・ドイル、マーク・トウェイン、サミュエル・ジョンソンなど多くの文豪が通ったことでも知られています。

ドアの鉄のノッカーは、アイルランドの作家オリバー・ゴールド・スミスの家から寄贈されたと言われています。

 

社会主義作家のスポット Old Red Lion Theatre Pub

 

ルーツを1415年にさかのぼると、オールド・レッド・ライオン・シアター・パブは、チャールズ・ディケンズ、カール・マルクス、ジョージ・オーウェルなどを歓迎する人気の社会主義者たちの出没スポットでした。

舞台好きな人は、2階の劇場で『The Play That Goes Wrong』などのウェスト・エンドのヒット作が今でもチェックできますし、夏には太陽の下でビールを楽しむためのビア・ガーデンもあります。

 

Fitzroy Tavern

 

ロンドン中心部のフィッツロビア地区にあるシャーロット通り16番地にある公共の家で現在、サミュエルスミス醸造所が所有しています。

ジョージ・オーウェルとディラン・トマスは、この近くのBBCで働いていたときにここで飲みました。

画家のオーガスタス・ジョンは、「フィッツロイは世界のクラパムジャンクション駅のようなもので、誰もがいつかは出入りする」と言いました。

 

Marquis of Granby

 

マーキーズ・グランビーは、シャーロット・ストリートとラスボーン・ストリートに囲まれた場所にあります。

近年、この界隈は多国籍(特にアジア)料理店が数多く立ち並びます。

 

イギリス貴族のジョン・マナーズは、1703年から1711年まで儀礼称号にこのパブと同じ名前の「グランビー」を使用しました。

イギリスの詩人T・S・エリオットやディラン・トマスもここで飲みました。

 

チャールズ・ディケンズの小説にも登場 The Grapes

 

テムズ川とライム・ハウスにほど近い場所にあるザ・グレープスは、1583年以降、チャールズ・ディケンズの飲酒スポットでした。

老舗で趣のあるこのパブも重要建築物に登録されています。

チャールズ・ディケンズは、著作『互いの友(Our Mutual Friend)』の冒頭の章でこのパブに言及しています。

 

資産の借地権は、俳優のイアン・マッケレン、監督のショーン・マティアス、メディアの男爵エフゲニー・レベデフによって共有されています。

 

イギリス小説家集いの場 The Wheatsheaf

 

ウィートシーフは、1940年代から50年代にかけて、イギリス文学の偉大さとその素晴らしさの足場となりました。ジョージ・オーウェルとアンソニー・バージェスはこの場所のパトロンであり、画家のオーガスタス・ジョンはディラン・トマスにその後妻となるケイトリン・マクナマラをこの場所で紹介しました。

アンソニー・パウエルの「A Buyer’s Market」(日本語未翻訳)の X. Trapnelとレイナー・ヘッペンストールの「The Lesser Infortune」(日本語未翻訳)のドリアン・スコット・クリソンは、どちらもジュリアン・マクラーレン・ロスユニークなキャラクターに基づいています。

3人の著者は全員、The Wheatsheafでお酒を飲み交わしました。

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