頭の中に図書館を所有する天才 キム・ピークとは?




『レインマン』という映画があります。

 

この映画の中で、ダスティン・ホフマン演じるレイモンド・バビットが、ウエイトレスのネームプレートを見ただけで彼女の電話番号を言い当てるシーンがあります。

 

このモデルとなった人物が、頭の中に図書館を所有する天才、キム・ピーク(享年58歳)です。

 

キム・ピークが頭に図書館を所有すると言われる所以は何でしょうか?

 

 

キム・ピークの、想像を超える”脳力”

 

キム・ピークの日課は、ソルトレイクシティ公立図書館に行くことです。

ここで1日の大半を過ごします。

 

2003年にリニューアルオープンした新建築のソルトレイクシティ公立図書館

 

そして、そこで読んだ9600冊以上の本の内容を1字1句すべて(正確には98%だといわれている)を記憶しています。

 

 

好きな本のコーナーは「電話帳」が並べてあるコーナーで、それに書かれた名前と電話番号のすべてを記憶しており、定期的に自分の記憶を試すために同じものを読む(見る)のだそうです。

 

冒頭の映画『レインマン』のシーンの根拠はこれです。

 

超能力でも、ストーカーでもありません!

 

キムは、左右の目を使って両方のページを同時に読むことができ、文章のみで構成されている一般的な書物だとの1ページをだいたい10秒で記憶していたそうです。

 

ほかにも、こんな能力があります。

  • 生年月日を聞いて、それが何曜日であるかを即座に答える。
  • 米国の都市や町をつなぐ幹線道路をすべて言える。
  • すべての都市の市外局番、郵便番号、その都市をカバーするテレビ局や電話会社名の記憶。
  • 古典的なクラシックなどの題名、作曲された年月日、初演日、作曲者の生誕地に誕生日、死亡した日を記憶している。
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これはもはや、人ができることの想像を超えていて、目がコピー機の役割をし、頭の中にデーターベース化されているようなものです。

 

そんな能力から、まるで「歩く百科事典」、「歩く図書館」と言われるようになりました。

 

しかし、キムの能力はただ記憶(記録)するだけではなく、すごい速さで頭の中の情報を正確無比に引き出すため、インターネットの検索エンジンがもっとも近いということで、「キム=ピューター」の愛称で呼ばれました。

 



 

脳科学者にも解明不能なサヴァン(SAVAN)症候群

 

キム・ピークは、サヴァン(SAVAN)症候群です。

 

ある発達障害を持ちながら、絵画や音楽、計算などある特定の分野のみに、驚異的な能力を発揮する人を指しますが、その具体的な症例は、脳科学者にとってもいまだ解明できていないそうです。

 

アインシュタイン、モーツアルト、エジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチ

彼らもそうだったのではないかと言われています。

 

キム・ピークが「Scientific American」(アメリカの有名な科学雑誌)で紹介されたことにより、サヴァン症候群の存在が世の中に知れ渡ることになります。

 

そして、あらゆるサヴァン症候群の能力をすべて持ち合わせていることから

「King of Savan(キング・オブ・ザヴァン)」

と呼ばれました。

 

サヴァン症候群には、まだ多くの謎が残されているようですが、脳の画像診断法の進歩により疾病の全貌が明らかになってきています。

 

それによると、長年説かれていた「大脳の左半球損傷説」の裏付けにもなるそうです。

 

最近では、一部の痴呆症患者にサヴァンに似た徴候が突然出現すると報告され、すべての人の脳に天才的な才能がひそんでいる可能性も考えられるようになっています。

 

キム・ピークの”脳力”の原因

 

1951年、キム・ピークは、普通の子より30%も頭が大きな状態で生まれました。

 

また、後頭部に柔らかなコブが見つけられますが、医者は、コブが脳の一部だと考え、脳機能を破壊することを恐れ、処置しませんでした。

 

それは、少しずつ小さくなり、次第になくなったように見えたのですが、実は、コブが内側に入ったことにより、なくなったように見えただけでした。

 

しかも、それによって小脳の一部が破壊し、左右の目が別々に動くなど深刻な運動障害が起こります。

 

さらにキムの場合、成長が進むにつれ、症状は非常に複雑なものであることが明らかになっていきます。

 

キムは、後年までずっと、「重度の自閉症を併せ持つ」と言われていましたが、実際には、脳の複雑な障害によるものだけであり「自閉症ではない。」という研究結果もあります。

 

キムが本の丸暗記を始めたことに気づいたのは生後18ヶ月の時で、誰かが彼に本を読んで聞かせると、キムはたちまちそれらを暗記してしまったのだと言います。

 

そして、やがて、彼は家の書棚にある本を、分厚い百科事典も含め、すべて暗記します。

 

ある日、キムがそれらを一字一句声に出して暗唱していることに、父のフランさんが気づいたことから、その能力を発見することになりました。

 



 

まとめ

 

キム・ピークの頭の中に所有したデータベース

まとめ
  • 9600冊以上の本の内容
  • 生年月日と曜日の紐付け
  • すべての都市の市外局番、郵便番号、その都市をカバーするテレビ局や電話会社名
  • 古典的なクラシックなどの題名、作曲された年月日、初演日、作曲者の生誕地に誕生日、死亡した日

 

これら、またはそれ以上のものが頭の中に保存されていたそうです。

 

キムのそんな能力を知れば知るほど、まさに「歩く図書館」、「キム=ピューター」のニックネームがぴったりだと思わされます。

 

キムはずっと、それ以外の、人としての基本的な行動が出来なかったそうです。

しかし、映画レインマンでキムのモデルを演じたダスティン・ホフマンが

 

「君とは友達になりたいけどなれない。

友達というのは、目を合わせて挨拶するものだ。」

 

と言われ、そのときに挨拶を学んだそうです。

 

キムの能力は、これから生まれるであろうAI(ロボット)には出来ることでしょう。

 

でも、そういった能力に垣間見える人間らしいエピソードが、よりキム・ピークという天才の魅力を引き立たせます。

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