絶対に、図書館の本に付箋を貼ってはならない--。
今月21日、神奈川県立図書館の公式アカウントが、こんな言葉と共に投稿した「恐怖写真」が、ネット上で話題になっています。
なぜ、図書館の本に、絶対に付箋を貼ってはならないのでしょうか?
神奈川県立図書館の修理担当司書によるツイート
いったい、何が恐怖写真なのか分かるでしょうか?
図書館恐怖の写真(心霊番組風)画像をご覧いただきたい。お分かりであろうか。付箋をはがした時に、ページの表面が活字ごと剥がれてしまっている。長い年月を経た本は、きれいに見えても劣化が進んでいる事がよくあるのだ。絶対に、図書館の本に付箋を貼ってはならない……(横浜) #神奈川県立図書館 pic.twitter.com/3juO6qvoBe
— クリッピング!(神奈川県立の図書館) (@kanagawa_lib) 2018年6月21日
添付されている画像には、緑色の付箋が写っており、付箋をはがそうとした際に印刷されていた文字が一緒にはがれてしまった状態が見てわかります。
県立図書館の担当者が公式ツイッターにこれを投稿したところ、28日時点で約2万5000件リツイート(拡散)されています。
「図書館恐怖の写真(心霊番組風)画像をご覧いただきたい。」
からはじまる、心霊写真に例えたユーモアのある注意喚起は、悪気があってやったことではないであろう利用者への配慮が伺えます。
そして、みごとに予測以上の注意喚起になったことでしょう。
なぜ、図書館の本に付箋を貼ってはならないのか
そもそも付箋というものは、簡単に剥がれることが特徴でありメリットでもあり、本やノートに書かれた莫大な情報の中から、必要な箇所をわかりやすくするために使う便利なものですよね。
それを貼ってはいけないと言われたら、図書館の本を使って勉強している人には困る話かもしれません。
しかし、このツイッターを投稿した職員も「絶対に」と書いています。
その理由はなんでしょうか。
紙は、年月が経つにつれ劣化し、もろくなるため、いくら付箋のように強力ではない糊が使用されているものでも、ページの表面が剥がれてしまうことがあります。
また、ものすごく昔に発行された本などは、そもそも紙の素材が、現代に作られた付箋の糊と素材が合わないという理由で破れてしまう可能性もあります。
実際に、例の件で話題となった本は1977年に出版された県の歴史について書かれた本だったそうです。
この本が、年月の流れによる劣化によってそうなったのか、もともと付箋に合わない素材の紙だったのかはわかりませんが、実際にそういうことが起こってしまったというよい例です。
また、たとえ最近の本だとしても、綺麗に付箋が剥がれたように見えても、わずかに残った付箋の糊によって何十年後かに変色してしまう可能性があります。
このように、付箋で本が破損するかどうかは見た目では判断できないため、図書館の本には付箋ではなく紙のしおりを挟むのがよいでしょう。
本の修理は図書館にまかせて
今回、図書館からのツイートにこれだけ反響があったのは、「本に付箋を貼ってはいけない」と思っていない人が多かったからだと考えられます。
中には、「活字が剥がれるなんて知らなかった」という声もありました。
そして、もう一つわかったことは、図書館には本の修理のプロがいるということです。
今回のツイートをされたのも、県立図書館で本の修理を担当する職員だといいます。
本の誤った修理についてよくあるのは、
- 本に書き込みを発見し、消しゴムで消す
- 本が破れたり、ページが取れてしまい、自分でテープでの補修をする
などが考えられます。
しかし、消しゴムで消す場合も、やはり古い本だとページを傷めてしまうこともあり、そうすると修復できなくなる可能性もあります。
また、一般的なセロテープなどは時間が経つとテープが劣化したり、変色したりします。
そしてその結果、本を傷めてしまうことに繋がります。
図書館には、本の修復を担当する職員がいるので、返却の際に、「書き込みがあった」「誤ってやぶってしまった」ということを正直に伝え、そのまま返却するのが正解です。
ただし、あまりに酷い破損は、弁済になります。
まとめ
図書館の本には、”絶対に”付箋を貼ってはならない理由
- 紙は、年月が経つにつれ劣化し、付箋によってページの表面が剥がれてしまうことがある
- 昔に発行された本などは、紙の素材が現代に作られた付箋の糊と素材が合わないことがある
- 綺麗に付箋が剥がれたように見えても、わずかに残った付箋の糊によって何十年後かに変色してしまう可能性がある
- 本の書き込みを消しゴムで消すと、ページを傷めてしまい、修復できなくなる可能性がある
- 破れたページをテープで補修すると、テープが劣化したり、変色し、結果、本を傷めることにつながる
- 図書館には本の修理専門の職員がいるため、自己判断で補修せず、返却するときにその状態を伝える
絶対に、図書館の本に付箋を貼ってはならない--。
神奈川県立図書館の司書さんのこの言葉は、決して
「図書館の本だから、あなたの本ではないのだからやめてね。」
という意味ではなく、
「図書館の本が持つ特質が、付箋と相性が良くない」
ということを教えてくれるものでした。
図書館にある本は、長く保存し、何年にもわたって読み継いでもらうための資産です。
誰もが使える図書館の本だからこそ、マナーを守り、次の利用者がいい気持ちで利用できるように配慮していきたいですね。
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