日本同様、アメリカの図書館の求人市場もまた日に日に厳しくなっているようです。
多くの人が仕事を探すことについて工夫が求められています。
その工夫のひとつが、海外での就職です。
新しい国に移住することは大きな決断であり多大な神経を使い、緊張感が伴うことですが、同時にそれは素晴らしい機会となります。
前回の記事(世界で通用する「国際図書館司書資格」とは?)では、アメリカでALA認定のMLSI(図書館情報学修士号)を取得することが、いかに価値のあるチケットであるかについて書きました。
もし特定の国に住むことを決めているなら、その地域の図書館協会を調べて自分の学位が適切であるかどうかを調べることになります。
ALA認定の修士号は実質的にすべての英語圏の国で有効ですが、それは、われわれ日本人がほかの国で働くことができないという意味ではありません。
前回の記事では、日本の図書館情報学修士号と司書資格の両方を持つこともまた、世界で働く可能性の広がるものだということが分かりました。
また、たとえば海外のインターナショナルスクールでは定期的に司書教諭を募集しています。
サンフランシスコの公共図書館で「日本語司書」を募集しているのを見たこともあります。
日本語を話す司書有資格者であれば、それもまた、2つのチケットを持っています。
ただし、無視できない問題もあります。
適切な学位と資格、高度な語学力を持っていてもなお、直面する問題があります。
以下は、オンタリオ州ウエスタン大学MLISの修了生であるケイト・マックレイがHLSに寄せた記事を許可を得て翻訳し、大幅に編集したものです。
ビザの必要条件
残念ながらビザの問題は、海外で働くという夢を閉ざす最も大きな原因となりえます。
短期ビザは比較的入手が簡単で、わたしたちの目的が、単に他国での生活を経験することであるなら素晴らしいですが、恒久的な移住権のある就労ビザを取得するのははるかに困難な場合があります。
高学歴の移民として、図書館司書はしばしば「例外」リストに載っています。
たとえばイギリスでは、図書館員は雇用主によって技術的に支援されることができ、英国に無期限に留まることができます。
しかしそれ以前に、雇用主は、その国で働く資格がある候補者を見つけることができなかったことを証明しなければなりません。
しかも、それは現在のところ、
- イギリスに適切な候補者が見つからない
- EU全域に適切な候補者がみつからない
このルートを得て、EU外のわたしたちにチャンスが回ってきます。
これはBrexit(欧州連合からのイギリス脱退)によって、今後、変化が起こり得るかもしれません。
それでもEU外のわたしたちにとっては待つ必要があります。
これらの制限は絶えず変化しています。
たった10~20年前、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの市民はかなり容易にイギリスに引っ越すことができましたが、もうそうすることはできません。
2019年現在、世界的な傾向は、国際的な採用を奨励するのではなく、国境を厳しくすることに向かっています。
世界で最も開かれた国のひとつであることで知られているオーストラリアでさえ、利用可能なビザの数を減らしています。(「司書」は今のところまだ、短期熟練職業リストに載っています)
一方、北米では、図書館員がNAFTA Professional/TNビザ*を取得するのは非常に簡単です。
カナダ、メキシコ、アメリカの市民が、大陸全体の図書館や情報組織で働くことを可能にする非常に熟練したビザです。
TNビザとはNAFTA北米自由貿易協定に基づく、カナダやメキシコの国籍保有者対象のビザ。
NAFTAの専門職リストにある職種に該当する申請者のみが申請することができる。
NAFTAの専門職は、おもに大卒以上を必要とする職種。
短期ビザであれば、可能性は広がります。
わたしはユースモビリティビザで2年間イギリスに住んでいましたが、その間の大半は、多様な都心部の公立図書館で図書館の助手として働き、その分野で自分のスキルを磨く機会を得ました。
そして、なぜ図書館が地域にとって重要なのかについて多くを学びました。
その国に留まることができなかったとしても、それは素晴らしい経験であったことも確かです。
海外の図書館事情
目的の(応募しようと考えている)図書館の財政事情などを把握・理解しておくこともまた大切です。
- その図書館は、市/州/国で評価されているか
- 予算は毎年、安定しているか、回復しているか、それとも削減されているのか
- 図書館の閉鎖や、それとも新しい分館が建設中か
これは国内でも大きく異なることです。
たとえばカナダでは、ニューファンドランドの図書館はオープンを維持するために闘っていますが、オンタリオでは、公共図書館は20年ぶりに相当額の資金を受けています。
図書館は人々の生活の中で至る所で重要な施設です。
そして実をいうと、図書館は運営危機に直面している地域であればさらにもっと重要な施設なのです。
しかしそれが、士気を低下させる可能性があるという事実には変わりません。
雇用市場はどのようなものかも調べておく必要があります。
- 市/州/などにたくさんの仕事があるか
- 昇進の機会はあるのか、それともすべての仕事が初級レベルなのか
考慮すべきことはたくさんありますが、これらは国際的な仕事だけではなく、どんな仕事にでも応募するときに調べるべき事柄ですよね。
移住先との相性
住む場所というのは、想像以上に「相性」があり、精神衛生に大きく関わるものです。
卒業に近づいている学生であれば、誰もが仕事を得ることを望んでいますが、そもそも、本当にそこに住みたいか、自分はそこに住んで幸せになるだろうか?ということについて、まず考える必要があります。
就職活動はストレスが多く、自分が間違った立場にあると感じた場合、焦りが生まれますが、急いで何かをやり直したり、決断してしまう必要はありません。
まったく慣れない場所に行く場合、職場の文化が期待外れのものだったとしても、その地域のユーモアのセンスを真似する必要もありません。
生まれた地域、国から出たことがない場合、ここで言われていることの意味が分からないかもしれません。
そして、違う場所に住むという体験をするまで、住む場所の影響について考えることもないかもしれません。
いずれにしても、新しいことを試みて、異なる文化や生活様式を経験することは、ストレスがたまるばかりでなく、信じられないほど刺激的なことでもあります。
あなたが得る新しい経験は、リスクに見合う価値があります。
まとめ
「国際図書館司書」の夢を阻む3つの問題
- ビザの問題
- 海外の図書館事情
- 移住先との相性
1の「ビザの問題」以外は”阻むもの”というよりも、自分の人生に責任を持ち、きちんと調べ、検討することの重要性です。
それらは国際的な仕事に限らず、どの分野にも当てはまることですね。
Kait McClary「The International Librarian」(June 14.2018)hls
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