図書館の仕事はAIに奪われる? 10年後、司書として食べていけるか




司書:解雇か、契約更新か?

魅力たっぷりの女の子グーグルと、その友だちのビング(*1)とヤフー!とチャチャ(*2)が、書庫の静寂を保ってくれる頼もしい公立図書館の司書から仕事を奪いました。いまや地元の図書館はオンライン上に存在し、靴もシャツも必要なく、ひらめきを感じたときは屋内でも”戸外で話す声量”を出していいのです。あの音量管理に優れた司書に未来はないのでしょうか?

 

評決:未来はあるでしょう。

バーチャル・メディアやインターネット検索がデューイ十進分類法に取って代わっても、人はやはり昔ながらの方法で読書を楽しみ、調べものに手を貸してもらえば感謝するのですから。新しい司書は検索やキーワードや役に立つウェブサイトに精通したデジタル・アーキビストなのです。

へザー・デュガン2012.『存続の危機にある12の職業…進化か絶滅か?』Salary.com

(*1)Microsoftが提供する検索エンジン「Bing
(*2)アメリカのサーシャルサーチサイト。本物の人間が情報検索を援助してくれる検索エンジン

 

1年ほど前、公共図書館の短期の仕事に応募したことがあります。

 

具体的には、100万冊ほどの蔵書のバーコードをすべてICタグに変える作業の求人でした。(結局、いろいろ条件が合わず辞退しました。)

 

これは自動貸出機に対応させるためのもので、将来的にその図書館が自動貸出機を導入させることを見込んでいたのは明らかです。

 

 

3年前に訪れた北区中央図書館では、1階カウンターに対面するように自動貸出機がずらっと並んでいて、小学生くらいの子が何人も、手慣れた様子で貸出手続きをしている姿をみました。

 

北区の自動貸出機はちょっと変わっていて、ほかの図書館のように台の上に本を横に置いて読み取るのではなく、ブックスタンドのように本、CDを立てかけて読み取るタイプのもので、日立製作所の無線ICタグ「ミューチップ」を採用しているとのことでした。

 

これだけでも、将来的に、図書館カウンターの人員が減ることが想像できます。

 

 

非正規司書はいなくなる?

 

近年、図書館の非正規雇用の薄給などが問題視されているが、薄給どころか、そのうちなくなると言われています。

 

2013年、英オックスフォード大学でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が、同大学のカール・ベネディクト・フライ研究員とともに「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」という論文を発表しました。

 

この論文では702の職業について、コンピューター技術の進歩によって近い将来に自動化される可能性(リスク)を分析しています。

 

まとめの部分(44頁以下)を要約すると、以下の通りです。

 

  • 10~20年程度のうちに自動化される可能性が高い(70%以上)仕事は、全体の47%
  • 運送や物流に関連する仕事は大半が消滅する
  • サービス業もかなりの部分が消滅する
  • 今後、労働市場で生き残っていくためには、高いクリエイティビティとソーシャルスキルが必要

 

そして、その中に「Library Assistants(図書館アシスタント)」が616位にランクインしています。

 

アメリカやイギリスで「Library Assistants(図書館アシスタント)」と呼ばれているものを、単純に、日本の「非正規図書館員(司書)」に当てはめることは難しいと思います。

 

それでも、図書館の業務がAIによって簡素化し、人員削減する場合、非正規から仕事が失われるのは自然な流れだと思います。

 



 

図書館司書はなくならない

 

非正規が担う業務がなくなるということは、正規の図書館職員はなくならないのか?

 

ということになりますが、指定管理者やアウトソーシングを導入するなど、運営方法が多岐にわたる日本の図書館を当てはめて考えるのはこれもまた、難しいところもあります。

 

野村総合研究所が2015年に発表した「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」の中では、AIやロボットへの代替の可能性が高い仕事とあげられている職種の中で、図書館と関連がありそうな業務に、

 

  • 一般事務員
  • 行政事務員(国、市町村)
  • 学校事務員
  • 受付

があります。

 

一方、将来にわたって人間が担う(人工知能やロボット等による代替の可能性が低い)仕事の中には、教育分野の

 

  • 社会学研究者
  • 学芸員
  • 学校カウンセラー
  • 教育カウンセラー

などが含まれています。

 

「図書館司書」については書かれていませんが、図書館司書の専門性は学芸員に等しい部分があるので、将来にわたって人間が担う仕事であると断言できると思います。

 

また、各図書館やそれを運営する自治体などによって、どの分野を正規、非正規が担うかにも違いがあれば、業務内容にかかわらず人件費を最優先事項とし、正規・非正規の人員の割合を崩さない図書館もあるかもしれません。

 

しかし、できる限りAIが代替した結果、人が担うべき少ない業務は正規だけで運営できるようになる可能性は十分考えられます。

 

たとえば公共図書館だと、嘱託やパートはいなくなり行政の正職員が専門的なすべての職務を担い、大学図書館の職員は、多くの職員が多部署に異動になるという可能性もありますよね。

 

指定管理者などの正社員は?

 

自治体や教育機関によっては、指定管理者やアウトソーシング制度を導入し、その運営をまとめて委託している図書館もあります。

 

ツタヤ図書館で有名な、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として運営する武雄図書館などがありますが、そういった民間企業の正社員として図書館に携わっている人はどうなるのでしょう?

 

これもまた、機械が代替できるところまで導入した結果、人が担うべき専門的な業務だけが残り、運営を自治体(この場合、武雄市)に戻されるという可能性もあるかもしれません。

 

非正規司書の貧困から抜け出せない 資格に逃げる人たち

2018.06.22

 

司書として正規で働く道を模索した結果、指定管理者やアウトソーシング事業会社の正社員となり図書館に派遣されるという働き方をしている人は、そういった動向をよく観察しておいた方がいいかもしれません。

 



 

まとめ

 

図書館の仕事はAIに奪われる? 10年後、司書として食べていけるか

 

まとめ
  • 英オックスフォード大学のAI(人工知能)研究によると、図書館アシスタントの仕事はなくなる可能性が高い
  • そこで生き残っていくためには、高いクリエイティビティとソーシャルスキルが必要
  • 専門職としての司書の仕事自体はなくならない
  • 指定管理やアウトソーシングがなくなり、各自治体に運営が戻る可能性はある

 

いくら、AIが人間の仕事を奪うといっても、それを数字で詳細に導き出されても、未来のことは分かりませんよね。

 

案外、何も変わっていない可能性もあります。(それはそれで問題ですが)

 

注目したいのは、「図書館アシスタントの仕事はなくなる」という部分よりもむしろ、「生き残っていくためには、高いクリエイティビティとソーシャルスキルが必要」という部分ではないかと思いますす。

 

冒頭で書いた、へザー・デュガンによる『存続の危機にある12の職業…進化か絶滅か?』には、

新しい司書は、検索やキーワードや役に立つウェブサイトに精通したデジタル・アーキビスト

だと書かれています。

 

司書もまた、図書館の中にいるだけではなく、もっとほかにできることがあるのだと考えさせられます。

 

図書館員がWikipediaを編集すべき5つの理由

2018.12.20

 

この記事は、図書館または関連機関の見解ではありません。

 

Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne 2013. 「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?

株式会社野村総合研究所 2015.「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~

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