わたしはかなりのテクノロジー好きで、同時に、図書館が人生を変えるために大きな力を持っていると信じています。
これら(テクノロジーと図書館)が一緒になれば、とてつもないカクテルを作ることができるでしょう。
ーーサラ・ホートン(カリフォルニア大学デジタルライブラリーディレクター)
『としょかんねずみ』という絵本があります。
ねずみのサムは、図書館の調べ物コーナーのうしろにある小さな穴の中で暮らしています。
夜になるとサムは穴からでて、思う存分本を読みます。
やがて、頭の中が空想の世界でいっぱいになったサムは、自分でも本を書いてみることにします。
サムは、自分でつくった小さな本を児童書コーナーに並べます。
それを見つけた子どもたちは大喜び。
サムの作った物語に夢中になり、いつの間にかサムは大人気作家となります。
しかし、そんな人間に対してねずみのサムは思うのです。
「どうしてみんなは、お話を考えたり、書いたりすることを難しいと思うのだろう」
空想の世界を飛び出し冒険すること、自分の好きな世界を創造すること、本を読むことも文章を書くことも、自由なはずです。
人間が自由にできることの喜びを、自由ではなかったねずみのサムが教えてくれます。
***
図書館司書となって、10年になりました。
わたしは、自治体や教育機関に所属する職員ではなく、派遣の非正規司書です。
資格取得に向けて勉強しているとき、「司書」という仕事についてこのように教わりました。
- 司書は、専門的な情報検索をすることができるプロである
- 本だけではなく、辞書や事典、参考図書や論文、図書館で契約しているデータベースを使って、より正確な情報を、できるだけ短い時間で利用者に提供する
- または、利用者と一緒に検索したり、利用者が自分でそれを出来るように導く
- それによって、利用者(市民や学生)が困っている問題を解決することができる
わたしは、利用者が困っている問題を解決する司書という資格を取得し、それを仕事にしている。
(当時)週5日通う職場には、本をはじめ、多くの情報に囲まれている。
それならば、どうしてわたしは、たったひとりの、しかも「自分」の問題を解決できないのだろう・・・
当時の「自分の問題」とは、「大好きな図書館の仕事だけでは食べていけないこと」でした。
まだ20代だったので、その気になればどこかの採用試験に挑戦することができたかもしれませんが、大学を出ていない(短大卒の)わたしには多くのチャンスは与えられませんでした。
そしてなにより、それ(安定した職に就くこと)が自分の本来の望みではないような気もしていたのです。
わたしは図書館の仕事が好きだけど、一生”非正規”で、これからも副業をしながら生きていくのか、
もし仮に、どこかの正規職員になれるのなら、本当にそうなりたいのか
そもそも「非正規」が問題というのは誰の何の問題なのか、
自分にとって「安定」は大切なのか、
「世間の常識」と「自分が望むこと」どちらを大切にしたいのか、
・・・・
このようなことを何度も何度も考えました。
そして、こう思ったのです。
ともかく、非正規だろうと、今のわたしは
「司書」である。
「専門的な情報検索をすることができるプロ」である。
もし、自分にその技能、専門性がきちんと備わっているなら、図書館を使ってなんでもできるのでは?
実際、わたしが世界で一番好きな図書館である「ニューヨーク公共図書館(NYPL)」では、図書館を使って夢を叶えた人がたくさんいます。
図書館を使って、本当に、だれでも夢を叶えられるのでしょうか。
「司書」は、その技能と図書館を使って自分の夢を叶えられたのか
そもそも、叶えたい夢は何だったのか?
という話になりますが、何か大きなことをやりたいということではありませんでした。
「何かを作りたい」とか、「何かに詳しくなりたい」というものがいくつかあったり、話せるようになりたい言語とかもあるので、そういったことを全部、図書館を活用して少しずつ身につけ、自分の行動を通じて「図書館でこんなことも出来るよ」というのを証明していきたいなと考えていました。
いや、「証明」っていうのもなんか違います。
そんな大げさなことでもなく、ただ好きなことを好きな図書館を使ってやりたいだけなのです。
そして、最初にも書きましたが、かつて図書館で働くことが夢だったのに、それを叶えてからはそれだけでは食べていけないことがわたしの問題でした。
その問題を解決すること、好きなことで自分を食べさせていくことが、最初の課題でした。
***
このようなことをぼんやり考えはじめたのが2014年頃です。
わたしが一番最初にやったことは、まず、大好きだった図書館の仕事を辞めることでした。
それにはいくつか理由があって、
- 何より、副業に充てていた時間をこのために使えるようにしたかったので、副業しなくてもそれなりに安定した給料を得たかった
- 司書の専門性以外にも、仕事を通じて学びたい(知りたい)ことがあった
- 図書館で得た業務経験をPRして、どういった業界でどのくらいの給与で採用されるか知ってみたかった
このような感じです。
そして、
2016年4月、手応えを感じはじめ、当時フルタイムで勤務していた仕事を退職しました。(少し強引でしたが、リスクを負う選択をしました)
2017年7〜9月 海外に滞在し、PCで仕事をしながら大学附属の語学学校に通いました。
2018年10月 また、図書館で勤務しはじめました。
どんなことをどうやったのか、今、何をして収入を得ているのかを書くことは難しいのですが、図書館というツールをどのように使ったのかをこれから、各記事で書こうと思っています。
図書館を使って夢を叶えられるのか これから
これまで、リアルタイムでこのようなブログをやればもっと臨場感があって楽しめたかもしれないし、自分の成長記録にもなったと思いますが、当時はただ淡々と、やるべきことをやっていただけなので、ブログを書くなど考えもしませんでした。
しかし、大好きな図書館でいろいろなことを知り、それを活用して1つの問題を解決できたことによって、それをアウトプットしていきたいという気持ちが湧いてきたのです。
そもそもそれは、図書館を知ってもらうという司書の役割のひとつでもあります。
今やっていることを継続することが最優先ですが、ほかにもやりたいことはたくさんあるので、これからも図書館を使ってチャレンジし続けていきたいと思います。
これからのことは、ここで、いろいろ書いていけますね。
いろいろなひらめきと挑戦する気持ちを与えてくれた参考図書
ダニエル・カーク 2012.『としょかんねずみ』 わたなべてつた訳 瑞雲舎.
菅谷明子 2003.『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告 』岩波書店.
サラ・ホートンのブログ『LIBRARIAN IN BLACK』
コメントを残す